H29年度 3月合宿 西表島編


こんにちは、西表の紫外線に腕と首回りをこんがり焼かれた平野です。
もう真っ黒。何故か去年の夏合宿より焼けました。

三月合宿、後半からは西表島です。
今回は一・二年生で夏休みだ!島歩きだ!ヒャッホー!

……そんな浮かれた気分に下された大自然からの厳しい鉄槌。
石垣・西表合宿はまさにここからが本番でした、ご覧下さい。


3月4日(土)
石垣青少年の家―県道79号線―石垣島離島ターミナル~海路~大原港―南風田キャンプ場


早朝からキャンプ地である石垣青少年の家を出発し、石垣の中心街を目指します。
そう遠い距離ではなく、標識やアスファルトも整備されているためまずは軽快な足取りで石垣離島ターミナルへと到着。
順調に食料の買い出しなどを済ませ、フェリーの時間を待ちます。


そうこうするうちにフェリーが到着。
豪快に進む高速フェリーに揺られたのちに、観光客に混じって西表へと降り立ちました。

だいぶ早めに着いてしまったため、
釣りが昔からの趣味というPLの清宮さんが、暇潰しも兼ねて港で釣りを始めました。

渡邉さんはこの横でお昼寝タイムに突入中
皆で日向ぼっこをしながら島と海と空を眺める時間。
ゆったりとした、南国の時の流れを感じます。


西表島は面積が284.4km²と、沖縄県内では沖縄本島に次いで2番目に大きい島。
その面積のうち優に8割が亜熱帯の原生林に覆われており、
全域が国立公園に指定されています。

「東洋のガラパゴス」とも呼ばれるこの島は、植物、動物ともに四百種以上の生態系が残されていると言われています。


看板によれば道路は東回りに半周存在しますが、
我々は反対に大原から鹿川、船浮へと回る西回りのルートを進みます。

秘境という響きに胸を高鳴らせながら、西表島最初の一日を歩き始めました。

大原港から南風見田(はえみだ)キャンプ場までは道も整備され、見慣れたサトウキビ畑が続いています。

ここにも牛が。
お腹がへります。

暑気と戦いながら進むワンゲル部員たち

とはいえ、この日の最高気温は23.6度。
石垣島のどの日よりも暑く、さらに南国の強い日差しは実気温以上に体感温度を引き上げていきます。
6km前後の平地としては短い行程ですが、早くも暑さという関門が道を阻みます。

とはいえ、そこは熟練の二年生と去年の夏合宿を耐え抜いた一年生達。
これしきの暑さはなんのそのと、遅れることなく時間通りに南風見田キャンプ場までの道のりを歩き終えました。

そこには……


晴れ渡る青空と、それ以上に美しい大海原がありました。


筆者がしばらく海を眺めた休憩所。とても涼しい


島中に実っているアダンの実。繊維質で、食べるのは難しい

食料調達に期待を寄せられていた清宮さんも……

半日で三匹を釣り上げ、「ここは楽園」と喜色満面の清宮さん
お見事!

深まる絆?

三匹釣れたうち、最も大きい一匹以外はリリース
合宿と通して最も釣れたカラフルなお魚。
マトフエフキダイという、スズキの仲間だそう。

丁寧に三枚に下ろして、


網焼きに。

海の命を糧に、感謝していただきます。

思い思いの時間を過ごし、まさに常夏の楽園といった楽しさの有頂天にあった我々。
しかし西表島の真の恐ろしさが姿を現すのは、ここからでした。


3月5日(日)
南風見田浜キャンプ場ーポーラ浜ーナイヌ浜ー小浜ー別れ浜ーサザレ浜ー大浜

西表島二日目。
我々の前に姿を現した難敵、それは……


でした。


海岸線を歩き始めると、西表の海岸はほとんどが岩盤でできていることがわかります。
岩盤の上に漂着した岩や石が積み上がり、天然のアスレチックと化した場所。

180°、どこもかしこも岩だらけ
それが西表島南岸でした。

山の岩稜でも見られないほどに大きな岩が、行く手を阻みます。

不安定かつ高低差の大きい足場。
全装状態で越えるには危険かつ、疲労も激しい道のりです。

このルートが困難になった理由、それは潮の満ち引きにあります。

これは三年前、2014年に行われた西表島合宿での、干潮時の写真。
ですが……。

この通り。
干潮の時間は毎日少しずつズレるため、この日に行動可能な時間には、潮が腰の高さまで満ちてしまっています。

このため、難しくともよじ登っては降り、

這い上がっては飛び移って進んで行くしかありません。

こんな危険地帯も、いくつあったか数え切れないほど。

日射もキツく、水分補給なしではすぐに熱中症寸前に。

疲労で頭のネジが緩む筆者
プロテインに魅せられた男、渡邉二年生
今日の獲物を探す釣り人
一部元気な人もいますが……

休憩を取りつつ、行けども行けども近付かない浜辺を目指します。

筆者、トップバッター
終盤には潮が岸壁にまで迫っている箇所もありました。
濡れた岩には苔も生え、とても滑ります。

転倒。

SASUKEばりに岩壁にしがみつき、どうにか越えます。

初めは余裕の表情だった武田くんも……

ぐったり。

それでもどうにか、今日のキャンプ地の大浜に到着。


岩棚からしみ出す水。自然に濾過され、綺麗で美味しい
水場も発見し、ようやく一段落です。


3月6日(月)
大浜ークイラ浜ー鹿川

海岸線沿いに歩き、断崖部を山へと入って抜けるルート。
日を追うごとに過酷さを増す西表島行程の、この日がまぎれもないピークでした。


日の出前から出発。


朝日を浴びながら砂浜、岩場を歩きます。



ですが運悪く直後に急な雨が。
以降は滑る岩を避けるため、浅瀬ならば海の中を歩き始めました。

そして、ブイの吊られた入り口に到着。
ジャングル越えが始まります。


ジャングルと言っても、そこは急傾斜の山道。
さらに入山者も平均して年数人程度のルートのため、
林野庁の結んだ目印を見失えば、すぐに道から外れてしまいます。


葉が固くトゲの刺さるアダンやヤエヤマヤシが鬱蒼と茂り、
鉈と鋸を使わなければ数歩さえ進めません。

さらに林冠、と呼ぶべきでしょうか。
蔓などが重なりあってできた植物の天井が地面と同化し、
天然の落とし穴まで作り出しています。

それに嵌った武田くんは、なんと肩まで落ちてしまいました。

最初の斜面を抜ければ、比較的緩やかな道に。

ジャングルを抜けて、鹿川まであと少し……

と思いきや、

なんと、腰まで浸からなければ通れない場所が。

ロープが設置されていたものの、その先に通れる道はありませんでした。


しかし、ここを越えれば鹿川は目前。

全員、気合でびしょ濡れになります。

着いた!

鹿川はかつて集落が存在した場所でもあり、水場も豊富。

奥は土砂と漂着物で埋め立てられている
湾の近くには、鹿川洞窟と名付けられた洞窟もありました。
一九七一……誰が残した文字でしょうか?


この日は風が強く、重石なしではテントが飛んでしまうほど。
それぞれ疲労も溜まってきましたが、虎の子のお菓子やジュースでコンパを行って励まし合います。


合宿はあと、残り二日。


3月7日(月)
鹿川ー標高132m地点ー網取湾 ウダラ浜

今日の行程は鹿川湾から網取湾まで、二つの湾の間を北上する山越えです。
このルートは、古くは琉球王国が最初に整備したものだとか。
カニも見つけ、幸先の良い?スタート。

沢筋を遡上していきます。



イヤというほど生い茂るマングローブ。



粘土質の泥に足を取られ、かかとが鉛になったかのような重さです。


上級生はいつも笑顔
テンションを上げたり下げたりしながら半分ヤケで踏破していきます。

良いものも見れました。
発達した板根が特徴的な高木、サキシマスオウノキ。
国指定の天然記念物です。


湿地帯の奥に、砂浜の姿が。

ウダラ浜、到着!
この日は行動時間よりも早めに到着できました。


汽水域の浅瀬が続く砂浜に岩はほとんどありません。

玉座に座る清宮さんと、服を干す犬飼くん
代わりに潮が満ちると、テントのかなり近くにまで海面が迫ってきます。

そして、なんと!
この日も釣りに出た清宮さんが、最後に最大の釣果を挙げます。
です!

その名もナンヨウクロダイ。
チヌとも呼ばれ、釣りや食材として人気があります。
体長は20cm近いビックサイズ。

清宮さんは最終的にこの日だけで6匹を釣り上げ、
合宿全体では11匹もの魚を釣り上げるという大成果を挙げました。

焼きでは磯臭さが残りやすいという教訓を活かし、下処理をしてから海水で塩茹でに。
味噌や塩、醤油でいただきます。

さすがはタイ。
今合宿で最も美味しくいただけた魚となりました。


3月8日(火)
ウダラ浜ーサバ崎山越え入り口ー船浮

ついに訪れた、合宿最終日!
もはや語るべきことはありません。
懐かしさすら感じる我が家へ、一瀉千里と駆け抜けます。


ですがそこは西表、日本最後の秘境。
そうやすやすと我々を帰してはくれません。

まず現れたのは、なんとウミヘビでした。

薄暗い早朝の海の中、先頭の矢野くんが急に「やばい、やばい、ウミヘビ」
と慌てて引き返してきます。
驚いて見ると、そこにはうねうねと泳ぐ細い紐のような何かが。

やがて日が差すにつれて、その縞模様からシマウミヘビだとわかります。
つまりハブの数十倍、コブラに匹敵する猛毒の危険生物です。

カメラを取り出す余裕もなく、全員必死に岩場へと登って近くから去るのを待ちました。


ウミヘビがいなくなると、次は地形の問題が。
目的地の船浮は見えているものの、山を越えると遠回りになります。


海に腰まで浸かる最短ルートか?
山を越えていく正規の迂回路か?

もはやそこには、濡れるなんてことを気にするメンバーはいませんでした。


そしてついに……


渡邉さんが驚いて叫びます。
「電気がある!」「建物が立ってる!」


失礼極まりないですが、その感動は全員が抱いているものでした。
なんせ実に四日ぶりに、人の住む世界に戻ってくることができたのですから。


喜びの記念撮影。

全員で船浮の船を表すポーズを取っています。
どこが船なのかは私にもわかりません。


着替えて、皆で行う解散式。
達成感を噛み締めます。



解散後の食事にと、腹ペコ部員たちが「猪カレー」という言葉に釣られて寄ってみると……



なんと、イリオモテヤマネコ発見捕獲者の方の奥さんが経営していました。

 
合宿後に食べるご飯は世界一!

とっても美味しかったです!


そして、フェリーの時間。
終わりとなると、不思議と名残惜しくなってくるものです。


長いようで短かった、五日間の島歩き。

決して楽な行程ではなかったものの、
かけがえのない経験をいくつも得ることができました。

苦労と共に培われる、価値ある体験。
今後は新たな新入部員たちも迎えて、それを分かち合っていきたいと思います。

コメント

沼津のフエフキダイ さんのコメント…
一番新入生に見られるであろう記事なのに、なんか読む限りヤバい集団みたいになってるよ…

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